プログラミング的思考とは?ゲームで遊びながら伸ばす“考える力”の育て方
プログラミング的思考というと「パソコンでコードを書く力」を思い浮かべる方も多いかもしれません。
けれど本質は、目的に向かって手順を組み立て、うまくいかなければ原因を見直して改善する――そうした“思考のプロセス”にあります。
この力は、特別な教材がなくても育てられます。
小学生、とくに低学年の時期は、パズルやボードゲームなどの遊びを通して、手順化・試行錯誤・判断といった要素を無理なく体験できるからです。
この記事では、プログラミング的思考が注目される背景を押さえつつ、遊びで伸ばすコツと、おすすめのゲーム・おもちゃ、失敗しない選び方をまとめました。
ご家庭で取り入れやすい形でまとめていますので、ぜひ参考にしてみてください。
この記事の目次
そもそも「プログラミング的思考」とは?必修化された背景と必要性

プログラミング的思考とは、やりたいことを実現するために、物事を整理し、手順を組み立て、うまくいかなければ見直して改善する――そうした思考のプロセスを指します。
これはコンピュータへの命令づくりに限らず、日常生活の段取りや問題解決にも応用できる力です。
2020年度から小学校でプログラミング教育が必修化された背景には、情報化が進み、ICTが当たり前になった社会で、子どもたちが「自分で考えて試し、改善する力」を身につける必要性が高まっていることがあります。
その土台として押さえておきたいのが、論理的思考を支える5つの要素(分解、抽象化、パターン認識、アルゴリズム、評価・改善)です。
これらを意識して育てていくことが、これからの時代を生き抜く力となります。
子供のプログラミング思考を育てるメリット

プログラミング的思考を養うことは、将来の進路に関係なく、子どもにとって役立つ場面が多い力です。
物事を順序立てて考える習慣がつくと、算数(数学)の文章問題や、国語の読解の「筋道を追う力」にもつながりやすくなります。
また、目標に向けて「どうすればいいか」を自分で考える経験が増えることで、問題解決能力が育まれます。
低学年のうちから遊びの中でこの考え方に触れておくと、机上の学習に入ったときも苦手意識が出にくく、自然と“考える癖”がつきやすいのが大きな利点です。
そして、失敗しながら答えに近づく体験は、粘り強さや創造性にもつながります。
「間違えた=終わり」ではなく、「直して前に進む」感覚が育つのは、長い目で見ても大きな財産です。
ゲームやおもちゃがプログラミング的思考の育成に効果的な3つの理由

玩具やゲームは子供たちがプログラミング的思考を身につける上で非常に有効なツールです。
難しい理論を学ぶのではなく、遊びという楽しい活動の中で、自然と思考の構成要素に触れることができます。
目標を達成するために試行錯誤したり、ルールの中で最適な手を見つけ出したりする過程そのものが、思考力を鍛えるトレーニングとなります。
ここでは、玩具やゲームがなぜ効果的なのか、その理由を3つの側面に分けて解説します。
理由1:試行錯誤を繰り返すことで論理性が育つ
ゲームでは、子どもは「ゴールする」という目的に向けて、いろいろな手を試します。
一度でうまくいかなくても、別の方法を考えてもう一度挑戦します。
この「計画→実行→評価→改善」のサイクルを、遊びの中で繰り返すことが、論理的思考の土台になります。
「なぜ失敗したのか」「次は何を変えるか」を考える流れは、プログラミングでいうデバッグ(うまく動かない原因を見つけて直すこと)の感覚にも近いものです。
失敗をネガティブに捉えず、「成功に近づくための一歩」として扱えるようになると、学校の学習や日常の問題解決でも強みになります。
理由2:デジタル機器を使わないので視力への影響が少ない
プログラミング学習というと、パソコンやタブレットを思い浮かべがちです。
もちろんデジタル教材にも良さはありますが、低学年のうちは「画面に触れる時間が長くなるのが心配」と感じるご家庭も少なくありません。
マイクラ(Minecraft)のようなデジタルゲームにも創造性を刺激する良さがある一方で、画面を見る時間が長くなりやすく、目の負担が気になるご家庭もあると思います。
手でコマを動かしたり、カードを並べたりするアナログゲームは、五感を使いながら思考力を養える点が魅力です。
物理的なモノを扱う体験は、子供の認識能力の発達にも良い影響を与えます。
理由3:ルールを守りながら対話することで社会性が身につく
複数人で遊ぶゲームは、プログラミング的思考だけでなく、社会性を育む機会にもなります。
参加者全員が共通のルールを理解し、それを守ってプレイすることで、社会生活の基本を体験できます。
自分の戦略を言葉で説明したり、相手の意図を汲み取ったりするコミュニケーションは、対話力を高めます。
協力して課題に挑んだり、時には健全な競争をしたりする経験を通じて、他者を尊重する態度や協調性が養われます。
こうした力は、小学校での集団生活はもちろん、中学・高校、さらには将来社会に出たときにも不可欠なスキルです。
プログラミングおもちゃやゲームに海外製品が多い理由

プログラミング学習向けのおもちゃやゲームは、海外製品が多い傾向があります。
背景として、海外ではプログラミング教育の歴史が長く、教材開発や市場の成熟が進んでいることが挙げられます。
とはいえ日本でも、2020年度の小学校必修化以降、この数年で「学校・家庭で迷わず使える」ことを重視した国内製品や、日本語サポートの整った教材が増えてきました。
今後も教育の広がりに合わせて、選択肢はさらに広がっていくでしょう。
【レベル別】プログラミング的思考を養うおすすめおもちゃ・ボードゲーム7選

ここでは、プログラミング的思考を養うのに役立つゲームを、年齢や習熟度に合わせて7つ紹介します。
どれも「遊びながら考える」設計になっていて、論理的思考力や問題解決能力を伸ばしやすいものばかりです。
それぞれ、どんな力が伸びやすいのか、遊び方のイメージとあわせて見ていきましょう。
【幼児向け】キュベット|木製ロボットを動かしてコーディングの基礎に触れる
キュベットは、スクリーンを使わずにプログラミングの基礎に触れられる木製玩具です。
子供たちは、木製のロボット「キュベット」を目的地まで動かすために、「前進」「右」「左」といった命令が描かれたブロックをコントロールパネルに並べます。
命令をどう組み合わせれば意図どおりに動くのかを考えることで、順序立てて考える力が自然と育ちます。
文字が読めなくても直感的に操作できるので、幼児期から簡単に取り組みやすいのも魅力です。
【低学年向け】ロボットタートルズ|矢印カードでプログラミングの概念を学ぶ
ロボットタートルズは、カメのコマをゴールにある宝石まで導くボードゲームです。
プレイヤーはプログラマー役となり、「前に進む」「右を向く」「左を向く」などの命令カードを順番に並べて、コマの動きを“プログラム”します。
カードの並びは、処理手順を示すフローチャートのような役割を果たします。
保護者がカメ役(ロボット役)になってカード通りに動かすことで、親子で会話しながら進められるのも特徴です。
回り道や障害物をどう避けるか考えることで、問題解決能力も育まれます。
【低学年からOK】プローボ|カードを並べてプログラミングの基礎に触れる
プローボは、低学年の子供たちがプログラミングの基礎に触れることができるおもちゃです。
カラフルな命令カードを並べて、キャラクターをゴールまで導くことで、物事を順序立てて考える論理的思考力が養われます。
例えば、「進む」「曲がる」といった具体的な命令カードを、どの順番で配置すればキャラクターが目的地に到達するかを、子供たちは試行錯誤しながら学びます。
直感的な操作でプログラミングの概念を体験できるため、小さなお子さんでも抵抗なく楽しめるのが特徴です。
【一人で集中】コードマスター|パズルを解いて問題解決能力を高める
コードマスターは、一人でじっくり考えるのが好きな子に向いた論理パズルです。
問題カードに示された条件に従って、キャラクターをゴールへ導くための“正しい手順”を考えます。
問題は60問あり、レベルが徐々に難しくなっていくため、達成感を得ながら継続的に挑戦できます。
ゴールするためには、どのアイテムをどの順番で集めるかなど、複数の条件を同時に考慮する必要があり、複雑な問題を小さな要素に分解して考える力が鍛えられます。
最終的な答えに至るまでの論理的な道筋を組み立てることで、実践的な問題解決能力が養われます。
【みんなで楽しむ】電脳スナップバトル|試行錯誤でデバッグ思考を身につける
電脳スナップバトルは、電気回路(理科)の要素を遊びに落とし込んだ、複数人で楽しめる対戦型ゲームです。
パーツ(カード)を組み合わせて回路を作り、ゴールの電球を先に点灯させた人が勝ち。
うまく光らないときは「どこが違う?」を確認して組み直します。
その過程が、プログラミングの世界で「デバッグ」と呼ばれるエラー修正作業の考え方につながります。
遊びを通して、間違いを恐れずに修正していく試行錯誤の姿勢を身につけることができます。
【立体パズル】グラビティ・メイズ|三次元で考え空間認識能力を養う
グラビティ・メイズは、重力を利用してボールをゴールまで導く立体パズルゲームです。
プレイヤーは、問題カードの指示に従ってスタートとゴールのタワーを配置し、残りのタワーをどのように配置すればボールがうまく転がり落ちるかを考えます。
通り道が立体的に交差するため、平面ではなく三次元で捉える空間認識能力が求められます。
物理法則を直感的に感じながら、論理的にコースを組み立てていく楽しさがあります。
トライアンドエラーを重ねながら正解に近づく過程で、粘り強さと思考力も育ちます。
【ひらめきパズル】ラッシュアワー|最短手順を考えるアルゴリズム思考を鍛える
ラッシュアワーは、渋滞した車を動かして“出口”へ脱出するロジックパズルです。
ゴールまでの道筋を逆算しながら「どの順番で、どの車を動かすか」を組み立てるので、手順を設計するアルゴリズム思考が自然と鍛えられます。
行き詰まったら一手戻してやり直す必要があり、試しながら最適解に近づくプロセスは、プログラミングのデバッグ的な考え方とも相性が良いゲームです。
購入前にチェック!ゲーム選びで失敗しないための3つの視点

プログラミング的思考を育むゲームはたくさんありますが、選び方を間違えると「難しすぎて続かない」「興味が湧かない」となりがちです。
せっかく用意するなら、お子さんに合うものを選びたいところです。
ここでは、購入前に押さえておきたい3つの視点を整理します。
レビューも参考にしつつ、最終的には「その子の今」に合うかどうかを軸に考えるのがおすすめです。
視点1:子供の年齢や発達段階に合っているか
まず大切なのは、対象年齢の目安と、お子さんの発達段階が合っているかどうかです。
対象年齢内でも「考えるのが好き」「まず動かして覚える」などタイプは違うので、難易度は少し余裕があるくらいが続きやすいこともあります。
また、ルールが複雑すぎると、思考以前に“説明の時点で疲れる”ことがあります。
最初はルールがシンプルで、成功体験が得やすいものから入るとスムーズです。
視点2:夢中になれるテーマやデザインか
思考力を伸ばすには、まず「続けたくなる」ことが大前提です。
世界観やキャラクター、ミッションの雰囲気など、子どもが惹かれる要素があると取り組み方が変わります。
どれだけ教育的に優れていても、子ども自身が「やってみたい」と思えなければ続きません。
同じような仕組みのゲームでも、興味のあるテーマなら集中が続きやすく、自然と試行錯誤も増えていきます。
“学べるか”だけでなく、“ハマれるか”も大切な判断材料です。
視点3:一人用か複数人用かプレイスタイルを確認する
一人でコツコツ取り組むタイプなら、一人用の論理パズルが向いています。
自分のペースでじっくり考えられるので、集中力を高めやすいでしょう。
一方、兄弟や友達、親子で一緒に楽しみたい場合は、複数人で遊べる対戦型や協力型がぴったりです。
会話しながら進めることで、思考力に加えてコミュニケーション面の学びも深まります。
まとめ

プログラミング的思考は、プログラマーだけの特別なスキルではなく、日常のいろいろな場面で役立つ考える力です。
ボードゲームやパズルなどの遊びは、子どもが楽しみながらその土台を作るのに、とても良い手段になります。
ポイントは、子どもが自分で考え、試行錯誤できる場面を増やすこと。
高価な教材を揃えなくても、ブロック遊びやルールのある遊びの中にも、思考力を伸ばすヒントはたくさんあります。
家にある遊びなど無料で始められることから試してみるだけでも十分です。
まずは、お子さんが「やってみたい」と思えるものから始めて、親子で会話しながら一緒に楽しむ。
その積み重ねが、知的な成長を後押ししていきます。







